平成30年度税制改正
以前、平成30年度税制改正において公的年金控除が改正されるというお話をさせて頂きました。
平成32年の所得税および平成33年の住民税から、基礎控除を10万円引き上げる関係から公的年金等控除の金額も一律10万円引き下げられます。
大部分の方は基礎控除が10万円あがりますから、所得税、住民税は変わりありませんが合計所得金額が10万円上がることにより影響が出る方がいらっしゃいます。
合計所得金額が上がることによる影響
合計所得金額で計算されるものと言えば国民健康保険料、後期高齢者医療保険料、介護保険料などです。
これらの公的医療保険については医療費控除や社会保険料、基礎控除といった「所得から差し引かれる金額」の部分は全く加味されずに保険料が計算されます。
つまり公的年金控除が10万円引き下がることにより、合計所得金額が10万円増加するためこれら公的医療保険の保険料が上がる可能性があるということになります。
国民健康保険・介護保険
国民健康保険
国民健康保険料、介護保険料の計算については、住んでいる市区町村で若干保険料率やそれぞれの保険料率が適用される範囲が違っています。
今回は両方とも私が住んでいる横浜市の場合で考えてみましょう。
横浜市の場合、国民健康保険料の計算式は
基準総所得金額×保険料率+均等割
となります。
基準総所得金額は合計所得金額とほぼ同じと考えて頂いて結構です。
保険料率は横浜市での保険料の総額を一般被保険者の基準総所得金額で割って算出します。地域によって保険料の総額も異なれば、基準総所得金額も被保険者数も異なりますので、ここで差が出るわけです。
前年の株式譲渡損と損益通算するために株式譲渡益を申告書に記載した場合には、前年の株式譲渡損と損益通算する前の譲渡益の金額が基準総所得金額となるため、所得税は還付になってもそれ以上に国民健康保険料が上がってしまったということが多々あります。
これと同じように平成32年分からは合計所得金額が10万円上がるわけですから、その分国民健康保険料が上がることになります。
介護保険
介護保険料については計算が複雑ですので、横浜市在住の65歳以上の方に限定してお話させていただきます。
横浜市の場合には、介護保険料は前年中の所得等に基づいた段階別の保険料となっており個人ごとに算定されます。平成29年度は基準額が71,880円となっており、本人に市民税が課税されていない場合にはこれより少なくなり、課税されている場合は多くなります。
本人の市民税が課税されている場合は、合計所得金額が
- 160万円未満の方 基準額×1.10=79,060円
- 160万円以上250万円未満の方 基準額×1.27=91,280円
- 250万円以上350万円未満の方 基準額×1.55=111,410円
・・・
という形で介護保険料を計算します。
このことから、合計所得金額が10万円増えても1段階上の計算式で計算されることがない限り介護保険料は増えません。
逆に合計所得金額が10万円増えたことにより、例えば前年の合計所得金額が155万円だったのが税制改正により165万円になり、1段階上で計算されることになってしまった場合には12,220円介護保険料が増えることになります。
編集後記
今回の改正が国民健康保険料や介護保険料の徴収増を狙いとしているなら、それを公表すべきだと思います。
所得税は変わらないけど、国民健康保険料や介護保険料増えたのであれば実質増税になります。