税務署提出書類の押印の見直し
国税庁ホームページに税務署提出書類の押印の取り扱いについて、税務署窓口で改めて求めないこととする内容が公開されました。
これは、令和2年12月に閣議決定された令和3年度税制改正大綱に以下の内容が示されたことに伴うものです。
提出者等の押印をしなければならないこととされている税務関係書類について、次に掲げる税務関係書類を除き、押印を要しないこととするほか、所要の措置を講ずる。
(1) 担保提供関係書類及び物納手続関係書類のうち、実印の押印及び印鑑証明書の添付を求めている書類
(2) 相続税及び贈与税の特例における添付書類のうち財産の分割の協議に関する書類
(注1) 国税犯則調査手続における質問調書等への押印については、刑事訴訟手続に準じた取扱いとする。
(注2) 上記の改正は、令和3年4月1日以後に提出する税務関係書類について適用する。
(注3) 上記の改正の趣旨を踏まえ、押印を要しないこととする税務関係書類については、施行日前においても、運用上、押印がなくとも改めて求めないこととする。
(令和3年度税制改正大綱より)
この閣議決定に基づき、全国の税務署窓口においては、本件見直しの対象となる税務関係書類について押印がなくとも改めて求めないこととしています。
(国税庁ホームページより)
殆どの書類は押印が必要なしとされましたが、相続税に関係する書類のうち、印鑑証明書の添付が必要な書類については、実印の押印が必要とされます。
相続税申告書の添付書類のうち実印の押印を必要とする書類
担保提供関係書類
相続税や贈与税の申告の際、非上場株式の納税猶予制度の適用を受けるためには、当該相続税の申告書の提出期限までに、当該納税猶予分の相続税額若しくは贈与税額に相当する担保を提供することとされています。
株券不発行会社や持分会社の場合、その担保提供について、関係書類を提出することとされており、その関係書類の中に、
- 認定承継会社の非上場株式に税務署長が質権を設定することについて承諾した旨を記載した書類(自署押印したものに限る)
- 納税者の印鑑証明書
を添付することになっています。
これは、書類に自署押印(実印)し、印鑑証明書を添付することにより、税務署長が質権設定することに同意をした、とみなされるためです。
延納の申請をする際の担保提供も同様とされています。
物納手続関係書類
相続税申告の際、現金による納税ができない場合、物納による納税をすることがあります。
その際、「物納財産収納手続書類提出等確約書」として
- 所有権移転登記承諾書
- 印鑑証明書
を添付することになっています。
この所有権移転登記承諾書には実印を押印することになっているため、印鑑証明書を添付します。
これは、物納した財産について、所有権が財務省に移転することを承諾した証として、承諾書に実印を押印することと印鑑証明書を添付することとなっているためです。
財産の分割の協議に関する書類
相続の際、協議により被相続人の遺産を分割する場合は、遺産分割協議書に相続人全員の実印を押印し、印鑑証明書を添付することとなっています。
これは実印を押印し、印鑑証明書を添付することにより、分割協議に同意したものとみなされるためです。
法務局や銀行はこの相続人全員の実印の押印がある遺産分割協議書を提出しないと名義を変更してくれません。
今回の措置で押印する必要がないとされても、手続き上押印が必要なものについては、引き続き押印された書類を提出しなければなりません。