外資系企業の消費税
先日、外資系企業に対し経理財務をアウトソーシングしている会社の社員研修で、セミナーの講師として行ってまいりました。
今回の内容は「外資系企業に関する消費税について」です。
外資系企業の消費税の納税義務
新設法人に該当する外国法人
外国法人の場合でも基準期間と特定期間がある限りにおいては、その基準期間の課税売上高および特定期間の課税売上高で消費税の納税義務を判定します。
基準期間がない新設法人に該当する外国法人の場合には、その本国で設立されてからの2年間は、日本国内で事業を行う限りは資本金が1,000万円以上であれば消費税の納税義務があります。
この場合の資本金の金額の算定については、
①設立1期目 : その事業年度開始の日におけるその外国法人の日本国内の登記上の資本金または出資の金額
②設立2期目 : 前事業年度の貸借対照表に記載された資本金または出資の金額
により判定することとされています。
また、その外国法人の資本金または出資の金額が、本国の通貨で表示されている場合は、その事業年度開始の日における為替相場の中値により円換算します。
輸出免税
事業者が行った課税資産の譲渡等が輸出免税に該当するかどうかについては消費税法で限定列挙されています。
輸出免税に該当した場合、輸出証明があって初めて輸出免税として認められることとなります。
居住者か非居住者か
輸出免税に該当するものとして限定列挙されるものうち、
- 非居住者に対する無形固定資産の譲渡または貸付け
- 非居住者に対して行われる役務の提供
については非居住者について以下の通り定義されています。
外国人 : 外国人は以下の者以外は非居住者となります。
①日本国内にある事務所に勤務する者
②日本国内に入国後6月以上経過している者
外国法人: 外国法人等の日本国内にある支店、出張所その他の事務所は、居住者として扱われます。
国境を越えた電気通信利用役務の提供に係る消費税の課税関係
国内取引か国外取引かの判定基準の変更
平成28年度税制改正により、国境を越えた電気通信利用役務の提供(インターネットによるサービス)が日本の消費税の課税対象となる国内取引に該当するかどうかについては
改正前 : サービスを行う者の事務所等の所在地
改正後 : サービスを受ける者の住所等
と変更されました。
これにより、日本から海外の事業者や消費者へのサービスが
改正前 : 課税(輸出免税)
改正後 : 不課税
となり、海外の事業者から日本の事業者や消費者へのサービスが
改正前 : 不課税
改正後 : 課税
とされました。
課税方式の変更
海外の事業者からの日本の事業者や消費者へのサービスについての課税方式は、
- 事業者向け電気通信利用役務の提供
- 消費者向け電気通信利用役務の提供
- 特定役務の提供(ミュージシャンのコンサートやスポーツ選手の興行試合など)
の3つに分けられることとなりました。
このうち、
1.事業者向け電気通信利用役務の提供
3.特定役務の提供
については、サービスを受けた日本国内の事業者が納税義務者となるリバースチャージ方式が採用されています。
事業者向け電気通信利用役務の提供
①サービスを受けた国内の事業者が納税義務者となる
②そのサービスの対価は課税の対象となり、仕入税額控除の対象となる。
消費者向け電気通信利用役務の提供
①海外の事業者が納税義務者となる(納税管理人が必要)
②そのサービスの対価は仕入税額控除の対象とならない。(その海外の事業者が登録国外事業者の場合には仕入税額控除の対象となります。)
特定役務の提供
①サービスを受けた国内の事業者が納税義務者となる
②そのサービスの対価は課税の対象となり、仕入税額控除の対象となる。