外資系企業の源泉所得税
先日、外資系企業に対し経理財務をアウトソーシングしている会社の社員研修でのセミナー講師のご依頼がありました。これから全6回に渡って、毎月テーマごとにセミナーを行う予定です。
今回の内容は「外資系企業に関する源泉所得税について」です。
外国法人と非居住者の取り扱い
外国法人で日本に支店などの施設がない場合と、日本に短期で働きに来ている方、所得税法上でいう非居住者の方の扱いには注意が必要になります。
- 日本の会社法により設立された法人と日本に住所がある方については全世界で生じた所得について課税される一方で、外国法人と非居住者に対しては、法人税法と所得税について日本国内で生じた所得のみに課税されます。
非居住者の場合は、原則、確定申告書を提出しなければなりませんが、短期で本国に戻ってしまう方などについては所得税を源泉徴収することで課税しなければなりません。
PEについての平成30年度改正
平成30年度税制改正において、外国法人などの恒久的施設(PE:Permanent Establishment)について見直しが行われました。
それでは具体的にPEとはどういったものを言うのでしょうか。国内法では、PEは次の3つの種類に区分されます。
- 支店PE
支店、出張所、事業所、事務所、工場、倉庫業者の倉庫、鉱山・採石場等天然資源を採取する場所はPEに含まれます。ただし、資産を購入したり、保管したりする用途のみに使われる場所、あるいは広告、宣伝、情報の提供、市場調査、基礎的研究等、その事業の遂行にとって補助的な機能を有する活動を行うためにのみ使用する場所は含まれません。 - 建設PE
建設、据付け、組立て等の建設作業等のための役務の提供を、1年を超えて行う場合のその場所は、PEとみなされます。 - 代理人PE
非居住者のためにその事業に関し契約を結ぶ権限のある者で、常にその権限を行使する者や在庫商品を保有しその出入庫管理を代理で行う者、あるいは注文を受けるための代理人等はPEとみなされます。ただし、代理人等が、その事業に係る業務を非居住者に対して独立して行い、かつ、通常の方法により行う場合の代理人等はPEとみなされません。
それまでは外国法人がPEを持たなければ日本の税金を課すことができませんでした。
それを利用したのがインターネットを利用した通信販売で、日本にある倉庫は子会社の倉庫であるため外国法人のPEには当たらないとされていました。
そこで、子会社の倉庫などについても外国法人本体の事業の一部を補うものであればPEとされることとなり、日本の法人税や所得税が課せられる可能性が出てきました。
また子会社は支店ではないので、PEではないのではとおっしゃる方もいますが、その事業内容が親会社の事業の一部を補うものであればPEとみなされるので注意が必要です。
この改正項目は平成31年1月1日以降開始する事業年度からとなっており、まだ申告書が提出されていません。
具体的事例が発表され次第、追記したいと思います。
給与等についての源泉所得税について
日本に転勤で仕事に来る外国人の方については、日本で働き始める時点において働く期間が1年以上であれば居住者、1年以内であれば非居住者とされます。
日本で働く期間が1年以内の予定の非居住者の給与については、役員と社員で取り扱いが異なります。
社員の場合
社員は仕事をした場所で課税されるため、原則日本で仕事をした場合は日本の所得税が課せられます。
役員の場合
役員は所属している法人の本店所在地で課税されるため、原則日本では課税されないことになります。ただし、日本の支店や子会社において、日本に滞在中の給与を支払っている場合には日本の所得税もかかることになります。
ただ、その年日本で働く期間が183日以内(これは国ごとによって違うので確認が必要ですが)であれば租税条約により免税とされている国があります。免税の適用を受ける場合には租税条約の届出書をあらかじめ提出をすることにより、所得税の源泉徴収もいらないことになります。