給与所得控除の見直し
昨年の税制改正から所得税を計算する際の人的控除(基礎控除、配偶者控除など)について、公平ではないのではという議論がされています。
この人的控除については高額所得者を優遇しているとの批判があり、例えば基礎控除については38万円の控除が高額所得者ほど税金が減っているとの指摘があるほどです。
他国の制度を見ても日本とは違った制度になっており、そのことも含めて今回基礎控除を改正するとともに給与所得控除、公的年金等控除も含めた形で改正が行われました。
<改正点>
給与所得控除の金額を
- 控除額を一律10万円引き下げ
- 給与所得控除の上限額が適用される給与等の収入金額を850 万円とし、その上限額を195 万円に引き下げ
これによりサラリーマン等で850万円以上の給与がある方のうち、次の所得金額調整控除の適用がない方は増税となります。
サラリーマン等で850万円以下の方については、基礎控除が10万円引き上げられていますのでプラスマイナスゼロとなり税金は変わりません。
所得金額調整控除の創設
サラリーマン等で年収850万以上の方を一律増税することは、その家庭の状況から不公平感があるとして、給与所得を計算する上で新たに所得金額調整控除という控除額を加算する制度が設けられています。
<改正点>
給与等の収入金額が850万円を超える居住者のうち、次の方については給与等の収入金額から850万円を控除した金額の10%に相当する金額を給与所得の金額から控除することとされました。
- 特別障害者
- 23歳未満の扶養親族を有する方
- 特別障害者である同一生計配偶者または扶養親族を有する方
ただし850万円を控除する際は、給与等の収入金額が1,000万円以上ある方でも1,000万円として計算することとなっています。
従って最大でも給与所得控除に加算される金額は15万円となります。
特定支出控除の見直し
給与所得者の方でも給与所得控除の50%以上を所定の経費に支出している場合には、給与所得控除の50%を上回る部分の支出という特定支出控除と給与所得控除との合計額を給与の収入から控除できる制度があります。
<改正点>
特定支出控除にかかる特定支出の範囲が見直されました。
- 職務遂行上、直接必要な旅費等で通常認められるものを追加
- 単身赴任者の帰宅旅費について、一月に4往復を超えたものを対象外とする制限を撤廃するとともに、自動車で帰宅した場合の燃料費と有料道路料金を追加
以上の改正は平成32年(平成32年は平成ではありませんが便宜上平成と記します)の所得税及び平成33年分の住民税から適用されます。
編集後記
最近の税制改正は「富裕層から税金をとる」傾向が顕著です。
サラリーマンの場合、年収850万円が果たしてそれに該当するか甚だ疑問ではありますが、給与所得控除は高額な方ほど控除が手厚いと批判があったための措置だと思われます。