プロ野球選手の税務調査

所得に関するもの

平成30年3月29日の新聞記事

昨年引退した元プロ野球選手が2013年までの3年間の経費約4,000万円が事業には関係ない個人的費用であると一部の費用計上が否認され、過少申告加算税や延滞税などを合わせて1,800万円ほどを追徴納税していたことが分かった、という記事がニュースに掲載されました。

2013年までの3年間ということですから、税務調査を受けたのは2014年の7月から2015年の1月までと推測されますがこの時期に発表ということで時間がかかりすぎている印象があります。

これについては、元選手が国税不服審判所に審査請求をしていたとのことで、ほとんど認められなかったようです。

プロ野球選手の確定申告

プロ野球選手やプロサッカー選手など、スポーツを職業にしている人はそのスポーツにかかわる所得を事業所得として確定申告します。

事業所得の場合は収入や費用を計上することになりますが、スポーツを職業にしている人の費用はそのスポーツに関するものだけを計上することができます。

プロ野球選手の場合、費用のうちシーズン中の遠征費などはほとんどが球団持ちであるため、費用として計上するものがあまりない場合が多いです。

この元選手も年棒は最高で2億円を超えていますから、費用を計上したとしても、所得税率は最高税率(当時は所得税率40%)が課せられているわけですから、このような個人的費用と判断されるものが経費に含まれていると追徴できる税額も大きいので調査を受けやすくなります。

経費の線引き

今回の件での追徴は過少申告加算税ですから、税務当局も悪質とは判断していません。
所謂「見解の相違」です。

何に対して「見解の相違」かと言うと
①家族との外食費を費用計上・・・野球選手は肉体が資本であるから栄養を補うことも仕事
②遠征時やテレビ出演時に着用する服の購入代などを費用計上・・・仕事に関わること
③家族旅行などの費用を計上・・・すべてがプライベートではなくトレーニングをしている
などの費用が個人的費用だから一部費用計上は認められないということになったようです。

一般的には家族との外食費や服飾などの購入代で、プライベートの範疇と判断されるものは必要経費にはなりません。

「税金は公平に」というのが税務当局のスタンスですから、一般的に認められないものはプロ野球選手といえども認められないことになります。

ただし、一部が仕事をするうえで必要不可欠であれば、その割合を合理的に計算し案分することにより経費に計上をしてもそれは認められると思います。

今回の件では、領収書を見て何をもって家族だけの外食費なのかを判断したのかは定かではありません。

しかしもし家族以外の仕事関係者が同席していれば、一部は交際費として計上できる可能性はありますからしっかりと記録を残しておくのも必要だと思います。

 

 

=編集後記=

プロ野球選手の場合、税金は翌年の年棒で納付する形になります。

移籍をしないのであればあまり年棒を下げてしまうと、翌年の年棒がすべて税金を納付する資金となることもありますのでうまく契約更改の交渉をすることが必要だと思います。