「「生前贈与」で親が子に毎年渡していた110万円。この節税策の意味がなくなる。」の記事は本当か?

相続・贈与に関するもの

7月26日のYahooニュース(東洋経済オンライン)の記事

令和3年7月26日(月)にYahooニュースに東洋経済オンラインによる「「生前贈与」で親が子に毎年渡していた110万円。この節税策の意味がなくなる。」の記事が掲載されました。


(Yahooニュースより)

題名通りの文言をそのまま解釈すると、「今後110万円の贈与をしても相続税の節税ができなくなる」となります。

現行の税制は、
相続税を計算する際、暦年贈与については相続開始前3年以内の贈与については、相続財産に加算する必要がありますが、相続開始前3年以前の贈与については相続財産に加算する必要がないため、相続税は関係なくなります
つまり、生前贈与をこの相続開始前3年以前の贈与に該当させると相続財産が少なくなるため節税効果があるわけです。

ちなみに、相続時精算課税贈与については、相続時精算課税制度を選択後に贈与したものはすべて相続財産に加算され、相続税として計算し直されます。

本文に記載されている内容は
・外国と同様に、相続税と贈与税が一体化されると予測
    →贈与税は実質的に廃止される
・今後の税制改正で、贈与税の非課税措置を含め廃止
・株式の譲渡益課税(所得税)の税率について、現行の20%から25%に引き上げ
・生前贈与をするなら令和3年のうち
となっています。

 

令和3年度税制改正大綱

令和2年12月10日、税制改正大綱が自民党と公明党から公表されました。

先の記事にもある通り、その税制改正大綱の冒頭にある「基本的考え方」には、今後の贈与税について改正を検討する旨の以下の文言が記載されています。

② 資産移転の時期の選択に中立的な相続税・贈与税に向けた検討
高齢化等に伴い、高齢世代に資産が偏在するとともに、相続による資産の世代間移転の時期がより高齢期にシフトしており、結果として若年世代への資産移転が進みにくい状況にある。
高齢世代が保有する資産がより早いタイミングで若年世代に移転することになれば、その有効活用を通じた、経済の活性化が期待される。このため、資産の再分配機能の確保に留意しつつ、資産の早期の世代間移転を促進するための税制を構築することが重要な課題となっている。
わが国の贈与税は、相続税の累進回避を防止する観点から、高い税率が設定されており、生前贈与に対し抑制的に働いている面がある。一方で、現在の税率構造では、富裕層による財産の分割贈与を通じた負担回避を防止するには限界がある。
諸外国では、一定期間の贈与や相続を累積して課税すること等により、資産の移転のタイミング等にかかわらず、税負担が一定となり、同時に意図的な税負担の回避も防止されるような工夫が講じられている
今後、こうした諸外国の制度を参考にしつつ、相続税と贈与税をより一体的に捉えて課税する観点から、現行の相続時精算課税制度と暦年課税制度のあり方を見直すなど、格差の固定化の防止等に留意しつつ、資産移転の時期の選択に中立的な税制の構築に向けて、本格的な検討を進める。

このことから、相続税と贈与税を一体化し、資産を次世代に移転する時期に左右されない税制に代わると思われます。

 

生前贈与の効果は今年まで?

先に記事によると、
税理士法人の代表は「生前贈与をやるなら今年中だ」と言い切ったとあります。

改正されるとすると、
①暦年課税贈与について、相続開始前3年以前の分も全て相続財産に加算して相続税を計算する(納付した贈与税は精算)
②暦年課税贈与を廃止し、すべての贈与を相続時精算課税贈与にする
のどちらかではないかと思います。

どちらも財産を次世代に移転する時期を問わず、税金も変わりありません。

この改正が来年の税制改正項目に入るかと言えば、私はまだ時期尚早だと思っています。
だからと言って、「暦年贈与は来年も大丈夫ですよ」と言える訳はありませんが。