住宅取得等資金の贈与を受けた場合の相続時精算課税の特例
平成33年(2021年)12月31日までに、父母又は祖父母からの贈与により、自己の居住の用に供する住宅用の家屋の新築等の対価に充てるための住宅取得等資金を取得した場合で、一定の要件を満たすときには、贈与者がその贈与の年の1月1日において60歳未満であっても相続時精算課税を選択することができます。
(注) 「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税の特例」の適用を受ける場合には、同特例適用後の住宅取得等資金
について贈与税の課税価格に算入される住宅取得等資金がある場合に限り、この特例の適用があります。
受贈者の要件
次の全てに当てはまる必要があります。
(1) 贈与を受けた時に贈与者の子や孫などである推定相続人又は孫であること。
(2) 贈与を受けた年の1月1日において、20歳以上であること。
(3) 自己の配偶者、親族などの一定の特別の関係がある人から住宅用の家屋の取得をしたものではないこと、又はこれらの方との請負契約等により新築等をしたものではないこと。
(4) 贈与を受けた年の翌年3月15日までに住宅取得等資金の全額を充てて住宅用の家屋の新築等をすること。
(注) 受贈者が「住宅用の家屋」を所有する(共有持分を有する場合も含まれます。)ことにならない場合は、この特例の適用を受けることは
できません。
(5) 贈与を受けた時に日本国内に住所を有していること(受贈者が一時居住者であり、かつ、贈与者が一時居住贈与者又は非居住贈与者である場合を除きます。)。
なお、贈与を受けた時に日本国内に住所を有しない人であっても、一定の場合には、この特例の適用を受けることができます。
(注) 「一時居住者」とは、贈与の時において在留資格を有する人で、その贈与前15年以内に日本国内に住所を有していた期間の合計が
10年以下である人をいいます。
(6) 贈与を受けた年の翌年3月15日までにその家屋に居住すること又は同日後遅滞なくその家屋に居住することが確実であると見込まれること。
(注) 贈与を受けた年の翌年12月31日までにその家屋に居住していないときは、この特例の適用を受けることはできませんので、修正申告が
必要となります。
家屋等の要件
「住宅用の家屋の新築」には、その新築とともにするその敷地の用に供される土地等又は住宅の新築に先行してするその敷地の用に供されることとなる土地等の取得を含み、「住宅用の家屋の取得又は増改築等」には、その住宅の取得又は増改築等とともにするその敷地の用に供される土地等の取得を含みます。
イ 新築又は取得の場合
(イ) 新築又は取得した住宅用家屋の登記簿上の床面積(マンションなどの区分所有建物の場合はその専有部分の床面積)が50㎡以上で、かつ、その家屋の床面積の2分の1以上に相当する部分が受贈者の居住の用に供されるものであること
(ロ) 取得した住宅が次のいずれかに該当すること
① 建築後使用されたことのないもの
② 建築後使用されたことのあるもので、その取得の日以前20年以内(耐火建築物の場合は25年以内)に建築されたもの
(注)耐火建築物とは、鉄骨造、鉄筋コンクリート造又は鉄骨鉄筋コンクリートなどのものをいいます。
③ 建築後使用されたことのあるもので、地震に対する安全性に係る基準に適合するものとして、「耐震基準適合証明書」又は「住宅性能評価書の写し」により証明されたもの
④ 建築後使用されたことのあるもの(上記②及び③に適合するもの以外のもの。)で、耐震改修を行うことにつき建築物の耐震改修の促進に関する法律第17条第1項の申請等をし、かつ、取得期限までに耐震基準に適合することとなったことにつき証明がされたもの
ロ 増改築等の場合
(イ) 増改築等後の住宅用家屋の登記簿上の床面積(マンションなどの区分所有建物の場合はその専有部分の床面積)が50㎡以上で、かつ、その家屋の床面積の2分の1以上に相当する部分が受贈者の居住の用に供されるものであること
(ロ) 増改築等の工事が、自己が所有し、かつ、居住している家屋に対して行ったもので、一定の工事に該当することにつき「確認済証の写し」、「検査済証の写し」又は「増改築等工事証明書」により証明されたものであること
(ハ) 増改築等の工事に要した費用の額が100万円以上であること
(注)増改築等の工事の部分に居住の用以外の用に供される部分がある場合には、増改築等の工事に要した費用の額の2分の1以上が、
自己の居住の用に供される部分の工事に充てられる必要があります。
適用を受けるための手続き
相続時精算課税選択の特例の適用を受けるためには、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に、相続時精算課税選択の特例の適用を受ける旨を記載した贈与税の申告書に、相続時精算課税選択届出書、登記事項証明書など一定の書類を添付して、納税地の所轄税務署に提出する必要があります。
この特例の適用を受けた年分以降の贈与税の課税方式
住宅取得等資金の贈与を受けた場合において、相続時精算課税の特例の適用を受けたときには、当該特例の対象となる住宅取得等資金の贈与があった年分以降の年分について、当該贈与者からの贈与財産に対する贈与税については、その財産が住宅取得等資金であるかどうかに関係なく相続時精算課税の適用を受けることになります。
住宅取得資金の贈与税の非課税と相続時精算課税と住宅借入金等特別控除を適用する場合
住宅借入金控除の適用を受ける場合、贈与を受けた住宅取得資金を住宅の取得対価に充てて住宅を取得したことにより、その住宅取得資金の贈与について直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税、及び相続時精算課税の特例を受けたときの住宅の取得対価の額は、これらの規定の適用を受けた住宅取得等資金の額を控除した金額とされるため、住宅借入金等の金額のうち住宅の取得対価の額を超える部分については、住宅借入金等特別控除の対象となりません。
例えば、
住宅の取得対価4,000万円に対し、住宅取得資金の贈与税の非課税の適用金額700万円、相続時精算課税適用金額1,800万円、金融機関からの借入金2,000万円とすると、
住宅借入金控除を適用する場合の取得対価の額は、
4,000万円-(700万円+1,800万円)=1,500万円
となります。