民法(相続編)改正について
社会の高齢化が更に進展し、相続開始時における配偶者の年齢も相対的に高齢化するなど、前回の昭和55年改正からは社会経済情勢が変化しており、また残された配偶者の生活に配慮する等の観点から、民法(相続編)と家事事件手続法の一部を改正した法律が、平成30年7月6日に国会で成立し、7月13日に公布されました。
民法(相続編)改正の概要
配偶者の居住権を保護するための方策について
配偶者短期居住権
配偶者は、相続開始の時に被相続人所有の建物に無償で居住していた場合には、遺産分割によりその建物の帰属が確定するまでの間など、引き続き無償でその建物を使用することができることとされました。
配偶者居住権
配偶者が相続開始時に居住していた被相続人の所有建物を対象として、終身又は一定期間、配偶者にその使用などを認める権利が新設されました。
これにより、配偶者居住権を取得した場合には居住していた家屋を承継しなくともその家屋に引き続き居住することができるようになりました。
遺産分割に関する見直し等
夫婦間での居住用財産の贈与等の持戻し免除
婚姻期間が20年以上である夫婦の一方配偶者が、他方配偶者に対し、その居住用建物又はその敷地(居住用不動産)を遺贈又は贈与があった場合の遺産分割においては、原則として当該居住用不動産の持戻し計算が不要とされました。
現預金の仮払制度
各共同相続人は、遺産である預貯金債権のうち、各口座ごとに一定の金額まで、他の共同相続人の同意がなくても単独で払戻しをすることができることとされました。
遺言制度に関する見直し
全文の自書を要求している現行の自筆証書遺言の方式が緩和され、自筆証書遺言に添付する財産目録については自書でなくてもよいものとされました。
ただし、財産目録の各頁に署名押印しなければなりません。
遺留分制度に関する見直し
遺留分減殺請求権から生ずる権利が金銭債権化されることとなりました。
つまり、遺留分を侵害された相続人は侵害した人に対し金銭を請求できます。
相続の効力に関する見直し
遺言等により承継された財産について、法定相続分を超える部分の承継については、登記等の対抗要件を備えなければ第三者に対抗することができないこととされました。
相続人以外の貢献を考慮するための方策
長男の嫁など相続人以外の被相続人の親族が、無償で被相続人の療養看護等を行った場合には一定の要件の下で、相続人に対して金銭請求をすることができることとされました。
改正民法の施行日
11月21日にこの「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律の施行期日を定める政令」が以下の内容で閣議決定され、公布されています。
- 自筆証書遺言の方式を緩和する方策
2019年1月13日 - 原則的な施行期日(遺産分割前の預貯金の払戻し制度、遺留分制度の見直し、相続の効力等に関する見直し、特別の寄与等の1・3以外の規定)
2019年7月1日 - 配偶者居住権及び配偶者短期居住権の新設等
2020年4月1日