遺言の方法と効力は?

相続・贈与に関するもの

遺言

遺言の効力

遺言は、被相続人の最終的な意思を反映し実現できる唯一の方法です。

遺言は、一定の方式に従ってされる相手方のない単独行為で、遺言者の死亡の時から効力が発生します。(民法985)

遺言を行った者を遺言者または遺贈者、遺言により財産を取得する者を受遺者と言います。

また、遺贈者は、自由に受遺者を決められることから、相続人はもちろん、相続人以外の個人でも法人でも受遺者となることができます。

普通法人が遺産を所得した場合は法人税が課税されますが、町内会やPTAといった人格のない社団等が遺贈を受けた場合には、その人格のない社団等に相続税が課せられます。

遺言の方式

遺言は、民法に規定された方式に従ってしなければなりません。(民法960)

その方式に反した遺言(要件を具備していない遺言)は無効となります。

遺言には、通常の場合
1.自筆証書遺言(遺言者がその全文(財産目録を除く)、日付及び氏名を自書し、押印したもの)
2.公正証書遺言(遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授するなど一定の要件を備えた公正証書により行ったもの)
3.秘密証書遺言(遺言者が署名押印して封印した遺言書を公証人及び証人の前に提出し、遺言者の遺言書であることの証明を受けたもの)
の3つの方式があります。

公正証書以外の遺言は、遺言執行の準備手続として、家庭裁判所に提出して「検認」を受けなければ有効な遺言書とはなりません。(民法1004)

自筆証書遺言の方式緩和

現行制度においては、自筆証書遺言は全文自筆でなければならないとされています。

今回の民法改正により、自筆証書遺言に添付する財産目録については自書でなくてもよいものとされました。

ただし、財産目録の各頁に署名押印しなければなりません。

これにより、財産目録はパソコン等で作成することや、通帳のコピーを貼付するが可能となりました。

遺言の撤回

遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができます。(民法1022)

前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなされます。(民法1023)

また、遺言者が故意に遺言書を破棄したときは、破棄した部分については撤回したものとみなされます。(民法1024)

遺贈

遺贈の意義

遺贈とは、遺言者が死後に財産を受遺者に無償で譲与することを言います。

遺贈には、包括遺贈特定遺贈があります。(民法964)

包括遺贈

財産の全部又は一部を包括的に遺贈するもので、財産に対する一定の割合を示してする遺贈をいいます。

包括遺贈を受けた包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有するとされています。(民法990)

つまり、被相続人の権利義務を包括的に承継することから、包括受遺者は、相続財産に対して相続人とともに遺産共有の状態となり、債務も承継し、遺産分割に参加することになります。

特定遺贈

特定の物や権利、あるいは一定額の金銭を与えるというように、財産を特定してする遺贈(割合で示されていない遺贈)をいいます。

受遺者は、その特定された財産を取得することができますが、それ以外の財産を取得するものではなく、また、遺言にない債務を承継することはありません。

遺贈の効果

遺贈は、遺言者の死亡の時(遺言の効力発生の時)から効力を生じます。(民法985)

 遺贈は、遺言者の死亡による財産の移転という点において相続と同一の経済的効果があるので、相続税法では、相続税の課税対象としていいます。(相法1の3)

遺贈の放棄

受遺者は、遺言者の死亡後、いつでも遺贈の放棄をすることができます。
遺贈の放棄は、遺言者の死亡の時に遡ってその効力を生じます。(民法986)

また、遺贈の放棄は撤回することができません。(民法989)

死因贈与

死因贈与は、贈与者の死亡により効力を生ずる贈与です。

例えば、「私が死んだらあなたに1,000万円贈与する。」といったものが死因贈与に該当します。

死因贈与は、贈与の一種であり契約であるので、法律的には単独行為である遺贈と異なります。

 

しかしながら、贈与者の死亡を原因として効力が生ずること、財産が無償で受贈者に承継されることなどの点で、遺贈と非常に類似していることから、民法では死因贈与は遺贈に関する規定を準用するとされています。(民法554)

相続税法では、死因贈与は経済的効果が遺贈に類似することから、死因贈与を遺贈に含め、相続税の課税対象としています。(相法1の3一()書)