広大地評価の改正

広大地評価の問題点

国税庁ホームページに「広大地」の評価方法が変更になった旨通知がありました。

 

「広大地」は1戸建て住宅を分譲する場合に道路を入れなければ家を建てられない土地については潰れ地が発生するため売買価額が下がります。
このことから相続税評価額も評価減をするということになっています。

 

「広大地」の評価を適用すると、土地の評価額が半分以下となる場合もあったことから
税務当局との争いになることも多く、何がよくて何がだめなのかの基準も曖昧との批判もありました。
平成29年度税制改正においても評価方法を見直す旨が明記されており、国税庁はパブリックコメントに広く意見を募集し、その結果としての改正となります。

 

 

従来の広大地評価方法

「広大地」とは
①その地域における標準的な宅地の地積に比して
②著しく地積が広大な宅地で、(1,000㎡(三大都市圏は500㎡)以上)
③都市計画法第4条第12項に規定する開発行為を行うとした場合に公共公益的施設用地の負担が必要と認められるものをいい、
④大規模工場用地に該当するもの及び中高層の集合住宅等の敷地用地に適しているものは除かれます。
(国税庁ホームページより)

 

その評価方法は

広大地の評価額 = 正面路線価 × 広大地補正率(注) × 地積

(注)広大地補正率 = 0.6 - 0.05 ×地積/1000㎡
※ 広大地補正率は0.35を下限とする。

 

最大65%の評価減です。

例えば2億円の土地であれば評価額は最大65%の評価減を適用した場合7,000万円となります。

 

 

地積規模の大きな宅地の評価

今回の改正で「広大地」という概念がなくなり、新たに「地積規模の大きな宅地」という概念が誕生しました。「広大地」の概念よりも厳密に戸建て分譲地が対象となっています。

 

三大都市圏では500㎡以上、それ以外の地域では1,000㎡以上の地積の宅地で次のものは除かれます。
①市街化調整区域に所在する宅地(開発行為を行うことができる地域を除く)
②都市計画法の用途地域が工業専用地域に指定されている地域に所在する宅地
③指定容積率が400%(東京都の特別区内においては300%)以上の地域に所在する宅地
④倍率地域に所在する評価通達22-2((大規模工場用地))に定める大規模工場用地

 

路線価地域の場合、その評価額は

地積規模の大きな宅地(一方のみが路線に接するもの)の相続税評価額
= 正面路線価 × 奥行価格補正率 × 地積 ×不整形地補正率などの各種画地補正率× 規模格差補正率

倍率地域の場合は上記式の正面路線価が、固定資産税評価の路線価(各種補正前)などの1㎡あたりの価額を使用し、上記計算式で算出したものを評価額とします。

 

規模格差補正率は以下の算式で計算します。
規模格差補正率=(A×B+C)/地積(A)×0.8
Bは地積の割合に応じ、0.8~0.95まで定められています。
Cは地積の割合に応じ、25から500まで定められています。

 

例えば三大都市圏に存する路線価20万円、1,000㎡で補正がないとした場合、
以前の「広大地」の評価は1億1000万円
「地積規模の大きな宅地」の評価では1億5600万円

 

同じく路線価20万円、3,000㎡で補正がないとした場合
以前の「広大地」の評価は2億7000万円
「地積規模の大きな宅地」の評価では4億4400万円

 

同じく路線価20万円、5,000㎡で補正がないとした場合
以前の「広大地」の評価は3億5000万円
「地積規模の大きな宅地」の評価では7億1600万円

 

以前の「広大地」では最大65%の評価減が可能でしたが、今回の「地積規模の大きな宅地」では評価減は20%から30%弱くらいになります。

評価減が以前より少なくなりましたので、税務当局との争いも少なくなるのでしょうか。

 

この改正は平成30年1月1日からの相続、遺贈または贈与から適用されます。
贈与をするなら今年中かもしれません。

 

 

 

=編集後記=

以前の「広大地」では道路が入らざるを得ない宅地分譲可能地域でも税務当局は旗竿地での開発が可能と言って「広大地」に該当しないという更正をするため、争いが絶えませんでした。

今回の「地積規模の大きな宅地」では道路が入るか入らないかの要件がなくなりましたので、この手の争いはなくなるものと思われます。

 

「広大地」評価をする場合の広大地補正率には各種補正を折り込み済みでしたので、今回の比較は実際とはかけ離れている場合もあります。