相続の方法が変わる?
今週のニュースで、法務省の相続関係の法制審議会で民法改正要綱案がまとまり、次の通常国会に民法改正案を提出する方針というものがありました。
日本経済新聞によると、相続に関する民法改正は1980年以来。残された高齢の配偶者が生活に困窮するのを防ぐ仕組み作りが必要とのこと。
以下で現状との比較をしてみます。
配偶者の居住権の保護
現状では、遺産分割協議や遺言により居住建物の所有権の取得者が決定しますが、その所有権の取得者の意向如何によっては、配偶者は家を出ていかなければならない状況になる場合もあります。
短期居住権
被相続人名義の家屋に被相続人の配偶者が居住していた場合、その居住建物を遺産分割すべき時は、所有権の取得者が決定した時又は相続開始の時から6月を経過する日のいずれか遅い日までの間、配偶者以外の者が所有権を取得したとしても、その建物に無償で居住する権利を有することとなります。
長期居住権
配偶者は被相続人所有の建物に相続開始時に居住していた場合において、次のいずれかに掲げるときはその建物に無償で居住する権利を取得する。
- 遺産の分割によって長期居住権を取得するものとされたとき
- 長期居住権が遺贈の目的とされたとき
- 被相続人と配偶者との間で、配偶者に長期居住権を取得させる胸の死因贈与契約があるとき
ただし、被相続人が相続開始の時に居住建物を配偶者以外の者と共有していた場合は例外となります。
この長期居住権については、登記事項となり明確な権利として相続財産になり遺産分割の対象となります。
登記することにより第三者に対抗できます。
遺産分割
持ち戻し免除の意思表示の推定規定
現状、被相続人から生前に贈与があった場合でも、その贈与財産は相続における遺産分割においては持ち戻しされます。
今回の改正では、婚姻期間が20年以上の夫婦の場合、その居住する建物およびその敷地について、遺贈または贈与をしたときは持ち戻し免除の意思表示があったものと推定されます。
仮払制度等の創設
(1)家事事件手続法の保全処分の要件を緩和する方策
家庭裁判所は、遺産分割の審判や調停があった場合において、相続財産のうちに債務の弁済等があり、その弁済等をしなければならないときは、相続人からの申し立てにより相続財産のうちの預貯金債権の全部または一部をその申し立てをした者に仮に取得させることができるとされました。
(2)預貯金の払い戻しを認める方策
各共同相続人は相続財産である預貯金債権のうち、その相続開始の時の債権額の3分の1にその共同相続人の法定相続分を乗じた額については、単独でその権利を行使することができることとされました。
この場合において、当該権利の行使をした預貯金債権については、その共同相続人が相続財産の一部の分割によりこれを取得したとみなされます。
また、債権額の3分の1にその共同相続人の法定相続分を乗じた金額については、標準的な必要性経費や平均的な葬式費用の額などを勘案して法務省令で定められます。
(3)一部分割
現状、遺言がある場合は相続人全員の同意がない限り遺産分割協議は行われません。
今回の改正により、遺言で遺産分割協議を禁じた場合以外は、共同相続人は遺産分割協議をすることができることとなりました。
(4)遺産分割の前に遺産を処分した場合
現状、遺産分割の前に遺産が処分された場合で共同相続人全員の同意がない場合はその処分は無効となります。
今回の改正により、遺産分割の前に遺産が処分された場合であっても、共同相続人はその全員の同意により、その処分をされた財産の分割時に遺産として存在するものとみなすことができるとされました。
民法改正要綱案(相続関係)その2へ続きます。
編集後記
今回の改正においては配偶者に有利になっており、他の相続人とのもめる原因になるのではとの指摘もあります。
もめるのはその配偶者が後妻で、被相続人の連れ子である相続人と血縁関係がない場合で、配偶者の子である相続人の場合は余程の事情がない限りもめないと思います。