相続により事業を承継した個人事業者の消費税の納税義務

個人事業者に関するもの

毎日新聞記事

10月14日の毎日新聞に以下の記事が出ていました。

個人事業主が開業から2年間は消費税の納税を免除される制度を巡り、会計検査院が調べたところ、家業を継承したケースでも適用されているとみられることが、関係者への取材で判明した。
検査院は制度の趣旨に反しているとの所見を示す見通し。 
関係者によると、検査院が調査対象としたのは「事業者免税点制度」。
新規参入の個人事業主などは開業から2年間消費税を納める義務が免除される。
消費税の課税は2年前の売上高を基準に決まるためで、小規模事業者らの事務負担などに配慮した措置。
家業を継承した場合は「廃業」と「開業」の届を出さなければならず、この際の開業手続きを新規参入と同様に扱っていた。 」

 

個人で事業を始めた時は、売上にかかわらず2年間にわたり消費税の納税義務が免除される制度があります。
しかし、消費税を納める義務がある個人事業を営んでいた親から相続等によりその事業を承継した場合は、その免除される制度の対象外となっており、1年目から消費税を納めなければいけません。

 

今回の記事では、
「収入状況を把握できた212人はほぼ全員が旧経営者が廃業届を出した当日か翌日に開業届を出していた
また、大半が旧経営者の時代から事業に何らかの形で参加しており、事業収入も旧経営者の時代と同規模だった。 」
となっており、1年目から消費税を納めなければならない状況だったと思われます。

消費税法の規定

相続があった年

  1. 相続があった年の基準期間における被相続人の課税売上高が1,000万円を超える場合は、相続があった日の翌日からその年の12月31日までの間の納税義務は免除されません。
  2. 相続があった年の基準期間における被相続人の課税売上高が1,000万円以下である場合は、相続があった年の納税義務が免除されます。
     ただし、この場合であっても、相続人が課税事業者を選択しているときは納税義務は免除されません。

相続があった年の翌年と翌々年

  1. 相続があった年の翌年又は翌々年の基準期間における被相続人の課税売上高と相続人の課税売上高との合計額が1,000万円を超える場合は、相続があった年の翌年又は翌々年の納税義務は免除されません。
  2. 相続があった年の翌年又は翌々年の基準期間における被相続人の課税売上高と相続人の課税売上高との合計額が1,000万円以下である場合は、相続があった年の翌年又は翌々年の納税義務が免除されます。
    ただし、この場合であっても、相続人が課税事業者を選択しているときは納税義務は免除されません。

 

手続き

被相続人が提出した「課税事業者選択届出書」「課税期間特例選択等届出書」又は「簡易課税選択届出書」の効力は、相続により被相続人の事業を承継した相続人には及びませんので、相続人がこれらの規定の適用を受けようとするときは、新たにこれらの届出書を提出しなければなりません

 

この指摘を受け、相続により被相続人の個人事業を承継した届書は新たに作成される専用の届出書により手続きを行う方向になると思われます。