消費税増税に伴う軽減税率制度(その1)

個人事業者に関するもの

消費税増税

現行、消費税率は国税分6.3%、地方消費税分は1.7%、合計8%となっています。

 

平成31年(2019年)10月1日からは
標準税率として国税分7.8%、地方消費税分2.2%の合計10%。
軽減税率として国税分6.24%、地方消費税分1.76%の合計8%となります。

 

軽減税率の税率は8%と変わらないのに国税分と地方消費税分の割合が異なっているのは、標準税率の国税と地方消費税の割合に合わせているからです。

つまり、8%を国税分78/100と地方消費税22/100に按分したということです。

 

今まで消費税の増税があるたびに一時的に複数の税率の取引が生ずることがありましたが、平成31年(2019年)10月1日からは通常の取引の中で複数の税率の取引が生ずることとなり、記帳などの事務の手間が増大することになります。

 

具体的には、
消費税が課税される収入や消費税が課税される経費等を税率ごとに区分して経理する必要があるほか、複数税率に対応した請求書等を交付したり保存したりするなどの必要があります。

 

 

軽減税率対象品目

軽減税率は低所得者への配慮の観点から、公明党の強い意向により自民党が折れる形で導入が決定されました。

 

対象品目は「酒類・外食を除く飲食料品」と「定期購読契約が締結された週2回以上発行される新聞」です。

 

軽減税率の対象となる飲食料品とは、
種類を除く一般的な飲食料品のほか、おもちゃ付き菓子のように一つのものに対し、1つの価格が提示されているものが含まれますが、外食やケータリングは含まれません。

 

また、「週2回以上発行される新聞」とは
「〇〇新聞」などの一定の題号を用いて、政治、経済、社会、文化等に関する一般社会的事実を掲載し、週2回以上発行されるものが該当します。

 

 

軽減税率制度導入の流れ

軽減税率制度は平成31年(2019年)10月1日に導入されますが、それに伴い仕入税額控除を受けるための帳簿や請求書等の保存形式が多少変わります。

 

区分記載請求書等保存方式

平成31年(2019年)10月1日から平成35年9月30日までの間に仕入税額控除を受けるためには、税率の異なるごとに区分して記帳するなどの経理方式に対応する「区分記載請求書等保存方式」による帳簿や請求書等(区分記載請求書等)の保存が要件となります。

 

この場合の税額計算は、その区分した経理に基づき行うことになりますが、区分経理を行うことが困難な中小事業者については経過措置として軽減税率が適用される消費税の割合を50/100とするなどの税額計算の特例が設けられています。

 

適格請求書保存方式

平成35年10月1日から仕入税額控除を受けるためには上記「区分記載請求書方式」に代わり「適格請求書保存方式」が導入されます。

平成30年4月に国税庁ホームページに、「適格請求書保存方式が導入されます」というパンフレットが掲載されました。
5年以上先の話ですが、今から準備をしておいてくださいという注意喚起です。

 

この「適格請求書保存方式」、上記の「区分記載請求書方式」と大きく異なる点があります。

それは、「適格請求書」は「適格請求書発行事業者」しか発行できないという制度になっているため、「適格請求書発行事業者」の登録を受ける必要があるということです。

 

税務署に登録申請をすると、登録番号が割り振られますので、それを適格請求書に記載する必要があります。

 

この「適格請求書発行事業者」の登録申請書は、平成33年10月1日から平成35年3月31日までの間に所轄の税務署に提出する必要があります。

 

また、「適格請求書発行事業者」は消費税を税務署に納める課税事業者でなければ登録することができません。

つまり、基準期間(概ね個人は2年前、法人は2期前)の課税売上高が1,000万円以下の免税事業者で、今まで消費税の処理を一切してこなかった事業者でも相手先から「適格請求書発行事業者」に登録することを求めれられる可能性があります。

この場合、課税事業者になるためには「課税事業者選択届出書」を提出して課税事業者になる必要がありますから、「適格請求書発行事業者」に登録したならば、それ以降消費税を税務署に納めなければならなくなる点に注意が必要です。

 

 

 

 

 

 

 

=編集後記=

軽減税率制度は低所得者層を助けるために導入されたのに、免税事業者が適格請求書発行事業者になるには課税事業者になり消費税を納税しなければならないなんて、なんとも皮肉な制度です。