取引相場のない株式の評価方法の改正
先日、国税庁ホームページに株式保有特定会社の取り扱いの改正が発表されましたので、それも含めて今回と次回とで、平成29年度税制改正における株価評価方法の改正についてチェックしていきます。
取引相場のない株式の評価は会社規模に応じ、類似業種比準価額方式と純資産価額方式の両方を折衷することにより評価額を算出しますが、会社規模が大きいほど類似業種比準価額方式を使用する割合が大きくなります。
安倍政権になってから類似業種比準価額方式に影響を与える日経平均株価が上昇し、当時の民主党政権時の株価から1万円以上も高くなっていますから、相続財産である取引相場のない株式の評価額が上昇していることになります。
取引相場のない株式の評価額が上がると相続税が上がることになりますから、法人の事業を承継する際、困難が生じます。
そこで平成28年度の税制改正大綱の最後の項目である「検討事項」で、「取引相場のない株式の評価方法の見直しを検討する」と明記されていて、平成29年度の税制改正において評価方式が改正されることとなりました。
従前の類似業種比準価額の評価方法
類似業種比準価額の評価には3つの要素を使います。
評価会社の「配当」「利益」「純資産価額」です。
「配当」: 直前期と直前前期の2期平均、
「利益」: 直前期1年間の利益と直前期と直前々期の2期平均の利益のいずれか低い方、
「純資産価額」: 直前期の帳簿価額
です。
これを上場会社の「配当」「利益」と「純資産価額」と比較してどの程度の評価額かを算出します。
具体的には
(計算式があるのですが、ここには表示しにくいので文章にします。)
①評価会社の1株当たりの配当を類似業種の1株当たりの配当で割る
②評価会社の1株当たりの利益を類似業種の1株当たりの利益で割る
③評価会社の1株当たりの純資産を類似業種の1株当たりの純資産で割る
④ 類似業種の株価×(①+②×3+③)/5
利益のみ3ばいするため、利益を計上している会社は株価が高くなる傾向にありました。
類似業種比準価額の改正
①類似業種の株価に「課税時期の属する月以前2年平均」を加える
②類似業種の上場会社の配当金額、利益金額と純資産価額について連結決算を反映させたものとする
③配当:利益:純資産価額=1:1:1とする(現行1:3:1)
④評価会社の規模区分について、大会社及び中会社の適用範囲を総じて拡大する
となっています。
④については
従業員数について現行100人以上が大会社であたものが70人以上で大会社になるなど大会社になる要件が緩和されています。
これにより、類似業種比準価額を適用する割合が大きくなる場合があり、株価が下がる可能性があります。
この改正は平成29年1月1日以後の相続若しくは遺贈または贈与から適用されます。
一度自社の株価を評価してみてはいかがでしょうか。
=編集後記=
改正前は利益を計上し続けている会社で赤字が出た場合は株価が下がる傾向があるためそこで株式を承継することが多々ありました。
改正後もその傾向は変わらないと思いますが、効果は以前ほどではないと思われます。