家なき子の特例の範囲の縮小
家なき子の特例は
①相続開始の時において、被相続人が一時居住被相続人、非居住被相続人又は非居住外国人であり、かつ、取得者が一時居住者又は日本国籍及び日本国内に住所を有していない人ではないこと
②被相続人に配偶者がいないこと
③被相続人に、相続開始の直前においてその被相続人の居住の用に供されていた家屋に居住していた親族でその被相続人の相続人(相続の放棄があった場合には、その放棄がなかったものとした場合の相続人)である人がいないこと
の全てに該当し、かつ、
④相続開始前3年以内に日本国内にあるその人又はその人の配偶者の所有する家屋に居住したことがないこと
⑤その宅地等を相続税の申告期限まで有していること
の2つの要件を満たす場合に適用できます。
この場合、相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋は除かれます。
今回の改正で、④の要件から
イ 相続開始前3年以内に、その者の3親等内の親族又はその者と特別の関係のある法人が所有する国内にある家屋に居住したことがある者
ロ 相続開始時において居住の用に供していた家屋を過去に所有していたことがある者
が除かれることとなりました。
今までは被相続人か配偶者が所有した家に居住したことがなければ適用できましたが、3親等となると曾祖父母、曾孫、おじ、おば、おい、めいまでが含まれますので、いとこ以外の親族はみな含まれるイメージです。
また、今までは相続人が過去自宅を所有していたかどうかは不問でしたが、これからは所有したことがある方は適用を受けられなくなりました。
貸付事業用宅地等の範囲の縮小
貸付事業用宅地等の適用を受ける要件は、被相続人の貸付事業の用に供されていた宅地等の場合、
①その宅地等に係る被相続人の貸付事業を相続税の申告期限までに引き継ぎ、かつ、その申告期限までその貸付事業を行っていること
②その宅地等を相続税の申告期限まで有していること。
の2つの要件を満たすことが必要となります。
今回の改正では、
相続開始前3年以内に貸付事業の用に供された宅地等が除外されました。
つまり、相続開始直前に相続税対策で始めた貸付事業はダメということです。
ただし、相続開始前3年を超えて事業的規模で貸付事業を行っている者が当該貸付事業の用に供しているものは今回の改正の対象外ですので、引き続き適用を受けることができます。
特定居住用宅地等の要件の緩和
老人ホーム等に入居し自宅をそのままにしておいた場合、その自宅を小規模宅地等の特例の適用対象となるのは平成26年1月1日以降からです。
また、要介護認定または要支援認定を受けていたことが条件となります。
今までは
A 認知症対応型老人共同生活援助事業が行われる住居、養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、軽費老人ホーム又は有料老人ホーム
B 介護老人保健施設
C サービス付き高齢者向け住宅
が適用対象でしたが、今回の改正で、介護医療院もその対象となりました。
以上の小規模宅地等の特例の改正は平成30年4月1日以後に相続又は遺贈により取得する財産に係る相続税について適用されます。
ただし、貸付事業用宅地等の範囲にかかる改正は、同日前から貸付事業の用に供されている宅地等については、適用されません。
=編集後記=
小規模宅地等の特例の特例は減額割合が大きいため、税務当局からも注視される項目です。
小規模宅地等の特例を受けるために小細工をしようとしてもバレることが多いので小細工はしない方がよいでしょう。