外国人向け相続税・贈与税の納税義務の見直し(平成30年度税制改正)

相続・贈与に関するもの

日本の相続税

日本の相続税は世界でも類を見ないほど高額であると言われています。

世界中で相続税を課する国は数か国。
殆どが欧米の先進国ですが、中にはカナダ、オーストラリアやスウェーデンなど相続税を廃止する国もあります。
シンガポールや中国などは元から相続税自体がありません。

そのような中で、日本としては海外の優秀な人材に働きに来てもらいたいにも関わらず、平成29年度の税制改正前までは海外から日本に働きに来た方が亡くなった場合、家族ともども日本に住んでいたとするとその住所があるだけで全世界の財産、つまり母国の財産にまで日本の相続税がかかるという恐ろしい状況にありました。

「相続税がかかるから日本に行きたくない」という海外の優秀な人材の声が最近多いそうです。

平成29年度改正

そのような状況から平成29年度改正では、駐在など住所が一時的な外国人についてはその住所がないものとみなされました。

具体的には、
現在日本に住所のある外国人について、出入国管理及び難民認定方別表第一の在中資格の者で過去15年以内に日本に住所を有していた期間の合計が10年以下である場合には、日本に住所を有したことがない者と同様の扱い(日本国内の財産のみ課税)となります。

また、現在日本に住所を有していなくとも過去10年以内に住所をがあった外国人である被相続人等については、過去15年以内において国内に住所を有していた期間の合計が10年以下の者である場合には、日本に住所を有したことがない者と同様の扱いとなります。

平成30年度税制改正における見直し

上記のとおり、平成29年度改正では過去15年以内に10年以上日本に住所があるかどうかが判断基準でしたが、今回の改正では過去15年以内に10年以上日本に住所があっても国外財産には相続税、贈与税を課さない場合が設定されました。

具体的には、

  1. 相続開始又は贈与の時において国外に住所を有し、日本国籍を有していない
  2. 国内に住所を有しないこととなった時前15 年以内において国内に住所を有していた期間の合計が10 年を超える
  3. その間引き続き日本国籍を有してなく、相続開始又は贈与の時において国内に住所を有していない

以上の場合、国外財産には相続税、贈与税が課されません。

ただし、贈与の場合、
国内に住所を有しないこととなった日から同日以後2年を経過する日までの間に国外財産を贈与した場合において、同日までに再び日本国内に住所を有することとなったときは、その国外財産については贈与税が課せられます。

この改正は平成30年4月1日以後に相続若しくは遺贈又は贈与により取得する財産に係る相続税又は贈与税について適用されます。

 

=編集後記=

今回の改正は外国人向けの相続税の納税義務についての改正です。
日本人が悪用しないことを祈ります。