今問題になっている相続登記がされていない土地
全国各地で何代にもわたって相続登記がされていない土地の登記簿は約20%存在するといわれています。(国土交通省サンプル調査)
相続登記自体、義務になっていないため相続登記をしない人が多いのが現状です。
相続登記がされないと何が問題かいうと、その土地を所有する権利がある人が何人も出てきてしまい、その土地を処分したり利用したりする際はその権利がある人全員の承諾を得なければならないことです。
これが問題になっている代表例がさいたま市のこちらです。
大宮駅から徒歩圏内、旧中山道沿いの一等地であるにも関わらず、歩道にかなりせり出しています。
ここは何代にもわたって相続登記がされておらず、現状で所有する権利を有する人が数百人に上り行政も困っているそうです。
現状ではその権利を有する人全員からさいたま市が買い取る承諾を得なければならないが、どこに住んでいるか分からない人も数多くそのまま放置されているとの事。
そこで、国土交通省は平成27年4月、「所有者の所在の把握が難しい土地への対応方策に関する検討会」を設置。
平成28年3月に最終とりまとめを発表し、ガイドラインを公表しました。
対策の方向性としては
①多様な状況に応じた対応策に係るノウハウの横展開
②所有者とその所在の明確化
し、相続登記を推進する。
つまり、上記のさいたま市の例の場合、
権利を持つ人は全国に散らばっている可能性があるので、さいたま市だけが頑張っていてもそれには限界があるため全国の市町村で情報を共有できるようにしようということです。
そのため、国土交通省は次の通常国会で所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法(仮称)の提出を目指しています。
①知事の裁定により数年の利用権を設定し利用
②所有者が現れた場合は原状回復により明け渡し
(ただし、所有者が了解すれば利用を継続)
③所有者が現れた場合を想定し、賃料を供託
などが盛り込まれ所有者不明の土地の利用推進を図ろうとしています。
また、問題となっているのが登録免許税の問題です。
相続登記の場合、固定資産税評価額の4/100の割合で登録免許税がかかり、それも相続登記をしない理由の1つとなっているようです。
今回の税制改正において、所有者不明の土地に対する登録免許税の免税措置が設けられました。
相続登記をしないで死亡した場合
相続により土地の所有権を取得した者がその土地の所有権の移転登記を受けないで死亡し、その者の相続人等が平成30 年4月1日から平成33 年3月31日までの間に、その死亡した者を登記名義人とするために受ける移転登記に対する登録免許税は免税となります。
市町村の行政目的のための登記
個人が、所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法(仮称)の施行の日から平成33 年3月31 日までの間に、市街化区域外の土地で市町村の行政目的のため相続登記の促進を図る必要があるものとして法務大臣が指定する土地について相続による所有権の移転登記を受ける場合において、その移転登記の時におけるその土地の価額が10 万円以下であるときは、その移転登記に対する登録免許税は免税となります。
=編集後記=
登録免許税自体は税理士よりも、司法書士や弁護士の方が身近です。
「所有者の所在の把握が難しい土地への対応方策に関する検討会」の委員にも司法書士会の会長は含まれていましたが、税理士会からは誰も委員になっている方はいらっしゃいませんでした。
税理士の意見も聞いた方がいいような気がします。