小規模企業共済とはどんな制度?
概要
国がつくった経営者の退職金制度です。
企業の文字があるから法人の経営者しか加入できないかと言えばそうではなく、個人事業者をはじめ、その家族並びに中小企業の経営者及びその家族が加入でき、しかも所得税の計算において所得控除ができます。
加入資格は業種によりますが、おおよそ従業員が20人以下の個人事業主と会社の役員です。
共同経営者も個人事業主1人につき二人まで入れるので、夫婦で営んでいる場合は夫婦二人とも加入することができます。
共済金の額は、基本共済金と付加共済金の合計額となります。
- 基本共済金
掛金月額、掛金納付月数に応じて、共済事由ごとに小規模企業共済法施工例で定められている金額。
- 付加共済金
毎年度の運用収入等に応じて、経済産業大臣が毎年定める率により算定される金額。
掛金
掛金の金額
毎月、1,000円から70,000円までの範囲で無理なく掛金を設定できます。経営の状況によっては、その月額の掛金を変更することも可能です。
払込方法
月払い、年払い、半年払いの選択ができます。また、その方法は途中で変更をすることも可能です。
小規模企業共済のメリット
- 掛金を払い込む際のメリット
- その払い込んだ全額が小規模企業共済等掛金控除として所得控除の対象となります。また住民税についても同額が控除されます。
- 掛金の積立額の範囲内で契約者貸付制度を受けることもできます。
- 受け取る際のメリット
- 掛けた金額が全額受け取れ、受取は一括で受け取る方法と年金方式で受け取る方法があります。税を計算する際は、一括で受け取る場合は退職金として扱われ、年金方式で受け取る場合は年金として扱われます。退職金として受け取る場合には、退職所得扱いとなり、退職所得控除を受けることができます。
中小機構のこのページには「将来の受け取ることができる共済金」および「加入後の節税効果」を試算できるシミュレーションサービスがありますので、ご加入を考えられている方は一度シュミレーションをしていただいてはどうでしょうか。
小規模企業共済の注意点
解約手当金の短期解約は元本割れの恐れあり
共済金を受け取る際の種類と請求事由は以下の内容になります。この際に注意をしなければいけないのは、解約手当金の場合になります。任意解約の場合には、受け取るお金は共済金ではなく、解約手当金となるために加入後20年未満で解約をした場合には、受け取る金額が掛金よりも少なくなります。
余程の理由がない場合には任意解約とはなりませんが、加入前にはお問い合わせをされることをお勧めいたします。
(1)個人事業主の場合
共済金等の種類 | 請求事由 |
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共済金A |
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共済金B |
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準共済金 |
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解約手当金 |
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※1 複数の事業を営んでいる場合は、すべての事業を廃止したことが条件です。
※2 平成28年3月以前に、配偶者または子へ事業の全部を譲渡したときは、「準共済金」です。
※3 平成22年12月以前に加入した個人事業主が、金銭出資により法人成りをしたときは、「共済金A」となります。
(2)法人(株式会社など)の役員の場合
共済金等の種類 | 請求事由 |
---|---|
共済金A |
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共済金B |
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準共済金 |
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解約手当金 |
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※4 平成28年3月以前に、病気または怪我以外の理由による退任をしたときは、「準共済金」となります。
(中小機構のHPより)
1年以内の短期での解約
- 掛金納付月数が6か月未満の場合
共済金A、共済金Bはお受け取りいただけません。
- 12か月未満の場合
準共済金、解約手当金はお受け取りいただけません。
減額をする際の注意点
掛金の増額や減額はいつでも行えることはメリットですが、掛金を減額すると共済金の受取金額が減額されます。
現在の予定利率は1%で運用されていますが、掛金を減額すると減額した部分についてはその後運用をされないのです。
たとえば、7万円ずつ毎月掛けていたものを4万円に減額した場合、減額した3万円についてはその運用をしてもらえず、また減額した掛金部分については、減額後の期間が納付期間として計算されません。
その結果、解約手当金をもらうときに掛金の納付期間20年未満の場合には納付期間が足りないために、元本割れしてしまう可能性があるのです。その場合には減額しても再び元の金額に増額すれば、増額分については加入期間を通算して計算してくれます。
もし減額をした場合には、できるだけ早く元の掛金まで増額しましょう。また資金繰り的に難しい場合には、毎年の所得控除の恩恵を受けれることには変わらないのでしばらくは減額をした金額で掛金をかけましょう。
掛金を決める際には事業が落ち着くまでは、様子を見ながら掛金を設定されるといいでしょう。
不明な部分がある場合には、加入前に中小機構にお問い合わせされることをお勧めいたします。
経営セーフティ共済とは?
昔は中小企業倒産防止共済と名乗っていました。この経営セーフティ共済は、取引先事業者の倒産の影響を受けて、中小企業が連鎖倒産や経営難に陥ることを防止するための共済制度です。
中小企業とあるので法人しか加入できないかと言えば、そうではなく個人事業者も加入できます。
掛金月額
掛金は5,000円から20万円の範囲で自由に選択できます。
ただし、積立金が800万円に達した場合はこれ以上積み立てることができません。
経営セーフティ共済のメリット
税法上の取り扱い
法人の場合、掛金全額を損金の額に算入できます。
個人の場合、掛金全額を必要経費に算入できます。
1年以内の前払いも払い込んだ期の損金または必要経費に算入できます。
個人事業の場合、事業所得以外の収入(不動産所得等)には、掛金の必要経費としての算入が認められませんので注意が必要です。
共済金
取引先事業者が倒産したことにより売掛金債権等の回収が困難となった場合に、共済金の借入れが受けられます。
- 利率
共済金の借入れは無利子。
借入れ後は共済金の借入額の10分の1に相当する額が払い込んだ掛金から控除されます。
- 担保・保証人
不要
一時貸付金
この掛金はいつでも解約が可能で、解約手当金の95%の範囲内で貸し付けを受けることもできます。
- 借入金の使途
事業資金
- 返済期間
1年間
- 利率
利息は一時貸付金の借入れの際に、一括で前払い。
平成23年4月1日以降に中小機構が受け付けた一時貸付金の請求については年0.9%
- 担保・保証人
不要
- 解約手当金
事業を辞めるなどの理由により解約をする際には、その理由によって次の3種類に分類され、種類によって支給率が変わります。
- 任意解約
共済契約者が任意でいつでもきる解約 - みなし解約
個人事業主の死亡や法人(会社など)の解散・分割の際に、その時点で解約されたものとみなす場合 - 機構解約
12か月分以上の掛金の滞納や共済金の貸付けなどに不正行為があった場合に中小機構が行う解約掛金納付月数 1.任意解約 2.みなし解約 3.機構解約 1か月~11か月 0% 0% 0% 12か月~23か月 80% 85% 75% 24か月~29か月 85% 90% 80% 30か月~35か月 90% 95% 85% 36か月~39か月 95% 100% 90% 40か月以上 100% 100% 95%
(中小機構HPより)
任意解約でも、40ヶ月以上掛けている場合には全額返金されるので掛金については40ヶ月以上掛けられるとお勧めです。
経営セーフティ共済のデメリット
掛金を解約すると、その解約手当金は解約時の事業年度の益金の額に算入されます。
掛金を掛けた時には掛金全額を損金の額に算入されていたので、その分節税することができますが、解約の時点を選ばなければ解約時には納付する税額が増えますので解約時は時期を検討する必要があります。
まとめ
どちらの制度も掛金を支払うとその金額が税額を計算する上で利益から差し引かれます。つまり、掛金を支払うと節税になるということです。
掛けた金額が全額ほぼほぼ受け取れるものですので、節税になるものとしては国民年金基金や確定拠出年金などがあります。
小規模企業共済の場合、パンフレットにも所得が400万円の方で月々3万円の掛金を15年納付した場合は約228万円お得になるとあります。
従って個人事業者や家族経営の法人の経営者の方々には強くお勧めします。
銀行、信用金庫、信用組合、農協などの窓口でも取り扱っています。基本的に個人事業者は退職金の制度がありませんので、まだ未加入の方には是非ともお勧めします。
両制度とも同時加入もできます。
編集後記
ラジオなどでCMが流れている国民年金基金ついては所得税を計算する際は同じように掛金全額が所得控除できます。掛金の上限は68,000円です。
小規模企業共済と違うところは退職時などにもらうものではなく、年金がもらえるようになった時に上乗せされる点です。