事業承継税制の特例の創設(平成30年度税制改正)

相続・贈与に関するもの

事業承継税制の特例

中小企業経営者の年齢層の中心が60歳代半ばと高齢化が急速に進展しているため、今まで使いにくいといわれてきた事業承継税制が10年の期間限定で大幅に緩和されます。

具体的には施行日後5年以内に承継計画を作成して贈与・相続による事業承継を行う場合

  1. 猶予対象の株式の制限(発行済議決権株式総数の3分の2)を撤廃し、納税猶予割合80%を100%に引き上げることにより、贈与・相続時の納税負担が生じない制度とする
  2. 雇用確保要件を弾力化する
  3. 2名又は3名の後継者に対する贈与・相続に対象を拡大する
  4. 経営環境の変化に対応した減免制度を創設して将来の税負担に対する不安に対応する

等の特例措置が講じられます。

また、2年以上赤字である場合や、2年以上売り上げが減少している場合直前期の有利子負債が売上高の6ヶ月分以上の場合など会社が傾きかけた場合に、株式を売却したり、他の会社と合併したり、解散する場合には納税猶予額の一部が免除されます。

さらに、当該会社の株式を贈与する場合において、贈与者が推定相続人以外の者であっても、贈与者が60歳以上、受贈者が20歳以上であれば相続時精算課税制度の適用も受けられることとなりました。

特例承継計画の策定

ここで、事業承継税制の特例の適用を受ける場合は、認定経営革新等支援機関の指導及び助言を受け、当該会社が作成した計画平成30年4月1日から平成35年3月31日までの間に都道府県に提出し認定を受けなければなりません。

また、雇用確保要件を満たさない場合であっても、納税猶予の期限は確定しないこととなりますが、この場合には、その満たせない理由を記載した書類(認定経営革新等支援機関の意見が記載されているものに限る。)を都道府県に提出しなければならないこととなりました。

なお、その理由が、経営状況の悪化である場合又は正当なものと認められない場合には、特例認定承継会社は、認定経営革新等支援機関から指導及び助言を受けて、当該書類にその内容を記載しなければなりません。

適用時期

上記の改正は、平成30 年1月1日から平成39 年12 月31 日までの間に贈与等により取得する財産に係る贈与税又は相続税について適用されます。

 

=編集後記=

今まで事業承継税制は使いにくいと言われてきましたが、この改正により適用を受けようとする会社は増えるのではないでしょうか。

ま、猶予税額を納税しなければならないリスクを背負いながら経営することには変わりありませんが。