非上場株式等を相続・贈与した場合の相続税・贈与税の納税猶予制度の改正(その2)

相続・贈与に関するもの

制度をうけるための要件

昨日は非上場株式を相続・贈与した場合の相続税・贈与税の納税猶予の制度について、概要を説明しました。

 

今日は贈与税の納税猶予制度を受けるための要件を確認します。

 

会社の要件

次のいずれにも該当しなければ制度を適用することができます。
・上場会社
・中小企業者に該当しない会社
・風俗営業会社
・資産管理会社

資産管理会社については、資産の割合等が規定されています。
有価証券、賃貸用不動産等、現金預金等の資産の割合が総資産の70%以上の会社やこれらの資産からの賃貸収入や配当収入等の運用収入が総収入金額の75%以上の会社を言います。

 

後継者の要件

・会社の代表権を有していること

・20歳以上であること

・役員の就任から3年以上経過していること

・後継者及び後継者の親族で総議決権数の50%超の議決権数を保有することになること

・後継者が一人の場合、後継者が有する議決権数が後継者の親族の中で最も多くなること

・後継者が2人または3人の場合、総議決権数の10%以上を保有し、かつ、後継者の親族の中で最も多く議決権数を保有することとなること

 

 

 

先代経営者の要件

・会社の代表権を有していたこと

・贈与の直前において、贈与者と贈与者の親族で総議決権数の50%超の議決権を保有し、かつ、後継者を除いたこれらの者の中で最も多くの議決権数を保有していたこと

・贈与の時において、会社の代表権を有していないこと

 

ただし、
既にこの特例を用いて代表権を有していた贈与者からの贈与を行っているのであれば、1つ目と2つ目の要件がなくなります。

この場合、代表権を有していない親族が株式を所有していた場合にこの制度により後継者に株式を集中させることができます。

 

担保提供

この制度の適用を受ける場合は、納税が猶予される贈与税及び利子税の額に見合う担保を税務署に提供しなければなりません。

担保提供する財産は、当該贈与を受けた株式でも構いません。

 

 

取得株数の要件

この制度の適用を受ける場合は、後継者は一定数以上の非上場株式を取得する必要があります。

 

後継者が1人の場合は、発行済み株式数の3分の2から後継者自身が有する株式数を除いた株式数以上を取得しなければなりません。

ただし、発行済み株式数の3分の2から後継者自身が有する株式数を除いた株式数が先代経営者が保有する株式数よりも多い場合は先代経営者が保有する株式数すべてを取得する必要があります。

 

後継者が2人または3人の場合は、発行済み株式数の10%以上、かつ、贈与後先代経営者よりも保有する株式数が多くなるような株式数以上を取得しなければなりません。

 

 

贈与税を納付する必要がある場合

①この制度の適用を受けた非上場株式等の一部を譲渡した場合は、猶予された贈与税全額と利子税を合わせて納付しなければなりません。

ただし、贈与税の申告期限から5年を経過する日以降に譲渡した場合は、譲渡した部分に対応する贈与税と利子税を納付する必要があります。

 

②後継者が会社の代表権を有しなくなった場合、贈与税の申告期限から5年以内であれば、猶予された贈与税全額と利子税を納付しなければなりません。

 

③会社が資産管理会社に該当することとなった場合は、猶予された贈与税全額と利子税を納付しなければなりません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

=編集後記=
使いやすくなったとは言え、担保提供と要件を満たさなくなった時の納税が、この制度が普及しない原因だと思います。