非上場株式等を相続・贈与した場合の相続税・贈与税の納税猶予制度の改正(その4)

相続・贈与に関するもの

相続税の納税猶予

非上場株式等を相続・贈与した場合の相続税・贈与税の納税猶予制度の改正(その3)までは、贈与税の納税猶予制度について記しました。

非上場株式等を相続・贈与した場合の相続税・贈与税の納税猶予制度の改正(その3)

今回からは相続税の納税猶予制度について説明をいたしましょう。

対象株式の要件の緩和

今までの制度では非上場株式を相続した場合、発行済株式数の3分の2までの部分で80%の部分について納税猶予の制度を適用することができました。

この場合には最大でもおよそ53%しか納税猶予にならず、例えば被相続人が100%株式を保有していた法人の株式のすべてを相続した後継者はおよそ47%の部分については納税をしなければなりません。

今回の平成30年度税制改正において規定された10年限定の特例を選択すると、発行済株式数のすべてが対象となり、承継したすべての株式について納税猶予の制度の適用を受けることができることになりました。

雇用要件の緩和

また、今までの制度では5年間平均で相続前の雇用の8割を維持することが求められ、維持できなかった場合は猶予された相続税を利子税と合わせて納税しなければなりませんでしたが、今回の改正による10年間限定の特例を選択した場合は、雇用の8割が維持できなくても猶予された相続税を納税しなくてもよいこととなりました。

ただし、維持できなかった場合はその理由を報告しなければならず、報告しなかった場合は猶予された相続税を利子税と合わせて納税しなければなりません。

そのほかの改正については、「非上場株式等を相続・贈与した場合の相続税・贈与税の納税猶予制度の改正(その1)」をご覧ください。

非上場株式等を相続・贈与した場合の相続税・贈与税の納税猶予制度の改正(その1)

 

相続前の手続き

贈与税の納税猶予制度と同様に、相続が発生する前に会社の後継者や承継時までの経営見通し等を記載した「特例承継計画」を策定し、認定経営革新等支援機関の所見を記載の上平成35年(2023年)3月31日までに都道府県知事に提出しその確認を受けることが必要です。

顧問税理士が認定経営革新等支援機関である場合は、顧問税理士が所見を記載することもできます。

ただし平成35年(2023年)3月31日までの相続については、相続後に「特例承認計画」を提出しても構いませんが相続開始後8か月以内にその申請を行わなければなりません。

 

相続後の手続き

都道府県知事の認定

相続等により非上場株式等を承継した場合は、都道府県知事に対し相続開始後8か月以内に承継計画を添付した上で「円滑化法の認定」を受けるための申請をしなければなりません。

申告期限後5年間は、都道府県庁へ「年次報告書」を年1回提出する必要があります。

税務署への手続き

都道府県知事からは、この申請後「認定書」が送られてきますので、税務署にこの「認定書」を添付しこの制度の適用を受ける旨を記載した相続税の申告書を提出します。また申告書の提出と同時に猶予される相続税と利子税の額に見合う担保を提供する必要があります。

申告期限後5年間は、税務署へ「継続届出書」を年1回提出しなければなりません。6年目以降は、税務署へ「継続届出書」を3年に1回提出する必要があります。

この継続届出書」の提出がない場合は猶予されている相続税の全額と利子税を納付しなければならなくなりますので、注意が必要です。

 

編集後記

ほとんど贈与税の納税猶予の制度を同じですが、相続税の申告期限は相続開始から10か月ありますので、その間に手続きをすれば適用を受けることができます。