平成30年度税制改正
平成30年度税制改正において、事業承継税制の特例が創設されたことについてはこちらでお伝えしました。
先月、国税庁ホームページに「非上場株式等についての贈与税・相続税の納税猶予・免除(事業承継税制)のあらまし」が発表されましたので、改めて改正内容を確認します。
今回の改正項目は平成30年から10年間の限定措置となります。
対象株式数上限等の撤廃
現行、納税猶予の対象になる株式数には2/3の上限がありますが、改正後は上限が撤廃され全株式が適用できるようになります。
また、相続税の猶予割合は現行80%となっていますが、改正後は100%に拡大されますので、承継時の税負担はゼロとなります。
対象者の拡充
現行、対象者は一人の先代経営者から相続・贈与により承継される一人の後継者ですが、改正後は複数の株主から、最大3人の代表者である後継者への承継も対象となります。
雇用要件の抜本的見直し
現行、事業承継後5年平均で8割の雇用を維持することが求められており、この要件を満たさなければ猶予された全額を納付することになっています。
改正後は、8割の雇用を維持する要件を満たさなくても納税猶予を継続することが可能となります。
ただし、8割の雇用を維持する要件を満たせなかった場合には、その理由を報告しなければなりません。
経営悪化が理由であれば、認定経営革新等支援機関による指導や助言が必要になります。
経営環境変化に応じた減免
現行、後継者が自主廃業や事業の売却を行う際は、株価が下落したとしても承継時の株価を基に贈与税・相続税を納付しなければなりません。
改正後は、売却額や廃業時の評価額を基に納税額を再計算し納付することとなります。
つまり、株価下落時は承継時の評価額と売却・廃業時の価額・評価額との差額は減免されます。
相続時精算課税の適用範囲の拡大
現行、相続時精算課税を適用する場合は60歳以上の父母や祖父母から、20歳以上の子や孫への贈与が対象となっています。
改正後は、現行制度に加え、受贈者に贈与者の子や孫ではない20歳以上の後継者も対象となります。
これにより、親族外承継の場合も税負担なく承継することができます。
贈与前の手続き
贈与税の納税猶予についての手続きです。
都道府県知事の確認
贈与をする前に、会社の後継者や承継時までの経営見通し等を記載した「特例承継計画」を策定し、認定経営革新等支援機関の所見を記載の上、平成35年(2023年)3月31日までに都道府県知事に提出し、その確認を受けることが必要です。
顧問税理士が認定経営革新等支援機関である場合は、顧問税理士が所見を記載することもできます。
ちなみに、平成35年(2023年)3月31日までの贈与については、贈与した後に「特例承認計画」を提出しても構いません。
贈与後の手続き
都道府県知事の認定
株式等の贈与を受けた場合は、都道府県知事に対し、贈与の翌年1月15日までに、承継計画を添付した上で「円滑化法の認定」を受けるための申請をしなければなりません。
税務署へ継続届出書の提出
都道府県知事からは、この申請後「認定書」が送られてきますので、税務署にこの「認定書」を添付し贈与税の申告書を提出します。
申告期限後5年間は、都道府県庁へ「年次報告書」を年1回提出し、税務署へは「継続届出書」を年1回提出しなければなりません。
6年目以降は、税務署へ「継続届出書」を3年に1回提出する必要があります。
この「継続届出書」の提出がない場合は猶予されている贈与税の全額と利子税を納付しなければならなくなりますので、注意が必要です。
=編集後記=
そのほかの細かい要件や株式を売却した場合等の取り扱いについては次回に説明をさせていただきます。